降りしきる雨の中、男は問う。

「名前を言いな。墓ぐらいは建ててやるよ。」

しかし、相手は返事をしなかった。

世は大航海時代ー。地球と良く似、魔法文明が成り立つこの大陸でも大航海時代が始まった。

知らぬ世界を求めるもの…大金を夢見るもの…未知の強豪に挑もうとするもの… 幾多の冒険者が徒党を組み航海に乗り出した。

この燃え盛る船に残された二人ー。彼等もそれぞれの想いを胸に航海に出た者たちである。

ーいや、一人は既に事切れていたようだ。目の前にいるたった先まで斬りあっていた男を魔物の邪牙から救うため、自らを犠牲にして。

「・・・こいつは何故敵の俺を助けたのだ・・・何故己の人生をかけてまで・・・」

炎と同じ赤色の髪をした男は、もう答えぬ男を前に自問を繰り返していた。

ー雨はその後もしばらく止むことは無かった。


これは、国籍も身分も目的すらも異なる奇怪なグループが誕生する少し前の話であるー。


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